新編・吾輩は犬である 第1節
吾輩は犬である。とっしょりで目が薄く白んでいる当年とつて13歳。シエルテイ犬と血統書にはあるが、併し乍ら最近どうも吾輩のルーツに疑団がむらむらと生じておる。一つは体重の問題である。(主人の体重+吾輩の体重)-主人の体重=吾輩の体重であるによつて、主人が吾輩を抱え100Kg制限のヘルスメーターに載ると針はなんと100Kgを振り切り計測不能なのである。主人が通常びとより重いのか吾輩が通常シェルティより重いのか。じつは両方のやうな気がするのである。
といふのもこないだ横丁のシエルテイ仲間のゴン吉君が飼主さんに連れられて来たのである。「首つ玉に瘤のやうなものが出来ているんで其の犬の首を触らせて貰ひたいんやけど」節でごつごつした手で吾輩を吾輩の首を按摩しだす。ぐいぐいやるものだから首が痛い。「無いな」。ぐりぐりごりごり。「此処も無いな」。ごりごりぐいぐい。吾輩辛抱堪らず「きやん」と絶叫。「あ、判った。毛玉が二個あるだけか。ゴン吉帰ろか。ほなさいなら」。凝りもしていない首をさんざん揉まれて礼もなし。
ところでそのゴン吉君は同じおのこであるのに体重が吾輩の2/3程。9Kgと云つておつた。だいたい吾が犬種としては普通の域である。吾輩の体重は推定14~16Kg。大柄ではある。併し近所のおばはん連中からからはこの歳でもおなごに間違われ「可愛いなあ」とよく言はれるのである。沈魚落雁とは云はぬが結構近所では美形で有名なのである。
だがほんたうに吾輩はシエルテイなのだらうか。疑問になり系図を引つ張り出し見たのである。なんと爺さんの1人の名に「なんたらかんたらラツシー」とある。ラツシーとはあの名犬ラツシーか。コリー犬の名ではないか。シエルテイ犬の馬鹿でかいものはタイプ改良の名目で導入された血が原因といふのは吾が犬界では常識である。またラツシーといふ名とコリーといふ犬種は必ずしも関係があるとは云へないからさう神経質になるに及ぶまい。むしろ賢い犬とさるるコリーの血が入つているのもまたよろしと思ふべし。
名犬と云へば「名犬リンチンチン」。たしかシェパード。この犬種も賢いとさるる。リンチンチンで思ひ出した。「探偵ナイトスクープ」といふ高尚な教育番組を見てゐたら沖縄の味噌汁の1種「チンポーラ汁」を是非食べたいといふ依頼があつた。依頼文に何回も「チンポーラ汁」が出て来るので秘書の岡部まりさんは「チンポーラ汁」の部分を何故か飛ばして読んでゐた。併し西田局長などは補ふやうに「チンポーラ汁」を読み加へてゐた。
沖縄でも本島では珍しきもので石垣島に飛んだが見つけられず、そのまた離島の黒島といふ処でやつとそれに巡り遭へたのである。然も「チンポーラ」は間違ひで「チンボーラ」だつたのである。海岸に棲息する川のカワニナに似たやうな一群の巻き貝の総称だつた。あの秘書の赤面と憮然はこの世にないものに対してだつたのである。サザエのような味で旨いことは旨いらしい。
さう云えば奥播磨の千種町では神事に使用する榊の代用としてヒノキ・シラカシ・シノブヒバを使用する。そして注連縄を括る植物として「チンチンカズラ」を使用するのである。同じやうなものである。主人のパソコン画面に映るHNにも「●り●ん氏」といふ御仁あり。女性(にょしょう)と思しき人までなんの恥ずかしげもなくふ●ち●さん、と呼びかけてゐる。ネットとテレビでは世界がちと違うのかも知れぬ。テレビでは放送禁止用語ではあるまいか。
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